熱伝達係数(代表相関式)
円管内層流・円管内乱流・平板上乱流・垂直平板自然対流の代表相関式から、Nu数と熱伝達係数 h を概算します。
入力
D は管内径、L は加熱(冷却)が始まる入口からの管長です。μw は壁の温度での粘度、μ は管内の流体の平均温度での粘度。
D は管内径(呼び径ではない)、u は断面で平均した流速です。
u は平板から離れた主流の流速、L は前縁から流れ方向に測った平板の長さです。
L は平板の高さ、ΔT は壁面と離れた所の流体の温度差(正の値)。図は壁が流体より熱い場合で、壁が冷たいときは流れが下向きになります。
円管内層流では入口からの管長、平板・自然対流では平板高さまたは流れ方向長さを入力します。
バルク平均温度での粘度を入力します。
気体では概算として β ≈ 1/T[K]を使うことがあります。
計算結果
計算式
熱伝達係数は、代表長さに基づくヌセルト数 $Nu$ から求めます。
円管内の層流では、入口から管長 $L$ までの平均値を、壁温での粘度補正を含む次式(Sieder–Tate の式)で求めます。
円管内の乱流では、Dittus-Boelter型の相関式を使います。
平板上の乱流強制対流は、前縁から乱流の境界層とみなし、局所の式(気体は Lienhard 6版の式(6.112)、液体は式(6.113))を前縁から長さ $L$ まで積分した平均値で求めます。$Pr$ が 1.58 以下では気体の式、1.58 を超えると液体の式を使います。1.58 は2つの局所の式が同じ値になる $Pr$ なので、切り替えても値は連続します。
垂直平板上の自然対流は、Churchill と Chu の式で求めます。$Ra \le 10^9$ では層流の式(Lienhard 6版の式(8.13a))を使います。
$Ra > 10^9$ では乱流を含む式(同じく式(8.13b))を使います。
- $Re$:レイノルズ数[-]
- $Pr$:プラントル数[-]
- $Gr$:グラスホフ数[-]
- $Ra$:レイリー数[-]
- $\psi$:Churchill と Chu の式の $Pr$ の補正項[-]
- $Nu$:ヌセルト数[-]
- $h$:熱伝達係数[W/(m²·K)]
- $D$:管内径[m]
- $L, L_c$:代表長さ[m]
- $u$:平均流速[m/s]
- $\rho$:密度[kg/m³]
- $\mu$:粘度[Pa s]
- $\mu_w$:壁温での粘度[Pa s]
- $C_p$:比熱[J/(kg K)]
- $k$:熱伝導率[W/(m·K)]
- $\beta$:体膨張係数[1/K]
- $\Delta T$:壁面と流体の温度差[K]
- $\nu = \mu/\rho$:動粘度[m²/s]
- $g$:重力加速度(9.80665 m/s²)
- ここで扱う式は、単相流・代表的な形状に対する概算相関式です。沸騰・凝縮、複雑形状、非ニュートン流体、放射伝熱が無視できない場合は、対象装置に合った相関式を確認してください。
適用範囲と注意事項
単相流体の強制対流・自然対流について、代表的な形状の平均熱伝達係数を相関式で概算するツールです。選んだタブごとに式の前提が異なります。
- 円管内・乱流:Dittus-Boelter型で、加熱側は $n=0.4$、冷却側は $n=0.3$ です。式の適用範囲の目安は $Re \ge 10^4$、$0.6 \le Pr \le 160$、$L/D \ge 10$ です(参考資料の ht の説明による。文献によって範囲の書き方には違いがあります)。この範囲に $Re$ の上限は書かれていませんが、より精度の高い Gnielinski の式(Lienhard 6版の式(7.41)、$2300 \le Re \le 5\times10^6$、p.369)と比べると差があり、向きと大きさは $Pr$ によって違います。加熱の場合、液体($Pr = 7$)では $Re$ が大きいほど差が開き($Re = 10^5$ で約16%、$10^6$ で約3割小さく)、気体($Pr = 0.7$)では $Re = 10^4$〜$5\times10^6$ で1割前後(6〜13%)大きく出ます。本ツールは $Re < 10^4$ のときと、$Pr$ が 0.6〜160 を外れたときに警告を出し、$Re > 10^6$ のときは Gnielinski の式の値と差を結果に示します。Lienhard 6版は、Dittus-Boelter などの初期の式の誤差を $0.67 \le Pr \le 100$ で最大 +25%・−40% としています(p.369)。このタブには管長の入力がなく、管の入口付近の影響($L/D$)は考慮されません。また、壁温の粘度を補正する項がないため、壁と流体の温度差が大きく粘度が大きく変わる液体では、補正項を持つ式(Sieder-Tate型)を別に確認します。
- 円管内・層流:入口から管長 $L$ までの平均値を求める式で、$Re \le 2100$ 程度が対象です。式は $Nu \propto L^{-1/3}$ なので、管が長いほど $h$ が小さくなり続ける形です。十分長く流れが発達した管では、$Nu$ が一定値に近づく別の扱いが必要です。壁温粘度を空欄にすると $\mu/\mu_w = 1$ として計算します。
- 平板・乱流:前縁から全面が乱流の境界層とみなし、局所の式を前縁から $L$ まで積分した平均値です。局所の式は Lienhard 6版の式(6.112)(気体、空気の測定から、p.326)と式(6.113)(水と油の測定から、$Pr$ 85 まで、±15%程度、p.327)です。気体の式は、式(6.120)(p.334)で遷移域の始まりと終わりを前縁に置いた形と同じです。液体の式の積分は本書が「同じようにして作れる」と書くだけで、積分した形は本書に載っていません(係数 0.032 を 0.8 で割った 0.040 です)。気体か液体かを選ぶ入力がないため、$Pr$ で決めます($Pr \le 1.58$ は気体の式)。液体でも $Pr$ が 1.58 以下になる高温の水(飽和水で約 110 °C 以上。IAPWS の値で 150 °C の $Pr$ は 1.16)などは、気体の式で計算されます。$Pr$ が 0.6 未満(液体金属など)または 85 超のとき、本ツールは警告を出します。$L$ は流れ方向の長さです。
- 平板・乱流の前縁側:実際の平板では、前縁から層流の区間と遷移域があり、乱れの大きい流れ(主流の変動が3%ほど以上)では遷移が $Re \approx 4\times10^4$〜$10^5$ で始まることもあります(p.332)。その分だけ、実際の平均値はこのツールの値と違います。本書の例題6.9(空気、$Re_L = 1.27\times10^6$、遷移域 $Re = 4.0\times10^5$〜$8.7\times10^5$)では、遷移を考えた値が $Nu_L = 1433$、このツールの値は 2297 で約1.6倍です。$Re_L$ が $5\times10^5$ 未満では本ツールが警告を出します。実験室の風洞のような条件では、遷移は多くの場合 $Re_x = 2\times10^5$〜$5\times10^5$ で始まり(p.276)、$Re_L$ が $5\times10^5$ より小さい平板では全体が層流のままのこともあるためです。壁と流体の温度差が大きいときの物性の補正(液体は $(Pr_\infty/Pr_w)^{1/4}$、気体は $(T_\infty/T_w)^{0.4}$ を掛ける、p.327)は入っていません。
- 垂直平板・自然対流:Churchill と Chu の式です(Lienhard 6版の式(8.13a) p.419、式(8.13b) p.420)。$Ra \le 10^9$ では層流の式(8.13a)、$10^9$ を超えると乱流を含む式(8.13b)に切り替えます。本書は、層流では (8.13a) の方が正確で、(8.13b) はすべての $Ra$ と $Pr$ に使える、としています。2つの式は $Ra = 10^9$ で値がつながらず、その前後で $h$ が大きく変わります($Pr = 0.71$ で +33%、$Pr = 7$ で +39%、$Pr = 100$ で +42%。$Pr$ が小さいほど差は小さく、$Pr = 0.01$ では +13%)。どちらの式もすべての $Pr$ に使え、壁温一定・熱流束一定のどちらにも使えます。物性は膜温度 $(T_\infty + T_w)/2$ で評価します(p.420)。$Ra$ が式のもとになったデータの範囲(本書の図8.3の横軸で $10^{-1}$ 以上)より小さいと、本ツールは警告を出します。水平面・傾斜面・密閉空間は別の相関式を使います。気体の $\beta$ は $1/T$($T$ は絶対温度)で近似できます。
- 共通:物性はバルク平均温度または膜温度で評価します。沸騰・凝縮などの相変化、非ニュートン流体、放射伝熱が無視できない条件は対象外です。
- 結果の読み方:求まるのは相関式による平均の $h$ で、局所値ではありません。各タブの警告($Re$、$Pr$、$Gr\,Pr$ の範囲)が出たときは、その式が想定する範囲の外側にいます。
参考資料
スッキリわかる 化学工学
Amazonで見る
化学工学計算支援ツール