抽出
抽出後の相分離時間(静置)
抽出して撹拌を止めたあと、分散している液滴が浮上・沈降して2相に分かれるまでの時間を、液滴の終末速度(ストークス・アレン・ニュートンの式)から概算します。液滴径でどれだけ変わるかを早見表で確認できます。
入力
撹拌を止めたあと、どちらの相が液滴として分散しているかを選びます。
kg/m³
kg/m³
mPa·s
液滴が通り抜ける相(連続相)の運転温度での粘度。水20°Cなら約1.0 mPa·s。
μm
撹拌の強さで決まります。小さいほど分離は急に難しくなります(ストークス域では速度は $d^2$ に比例)。
m
液滴が界面まで移動する距離。静置容器の液深や分散帯の厚みを目安にします。
計算結果
入力値を入れて「計算する」を押してください
計算式
分散相の液滴が連続相中を移動する終末速度 $u_t$ を、粒子レイノルズ数 $Re_p$ の領域に応じて次の式で求めます。液滴が分散帯の厚み $H$ を移動しきる時間は $t = H/u_t$ で概算します。
ストークス域($Re_p < 2$)
$$ u_t = \dfrac{g\,d^2\,(\rho_p-\rho_c)}{18\,\mu_c} $$
アレン域($2 \le Re_p < 500$)
$$ u_t = \left[\dfrac{4}{225}\cdot\dfrac{g^2\,(\rho_p-\rho_c)^2}{\rho_c\,\mu_c}\right]^{1/3} d $$
ニュートン域($500 \le Re_p < 10^5$)
$$ u_t = \sqrt{\dfrac{3\,g\,(\rho_p-\rho_c)\,d}{\rho_c}} $$
粒子レイノルズ数と相分離時間:
$$ Re_p = \dfrac{\rho_c\,u_t\,d}{\mu_c},\qquad t = \dfrac{H}{u_t} $$
- $u_t$:液滴の終末沈降(浮上)速度[m/s]
- $\rho_p$:分散相(液滴)の密度[kg/m³]
- $\rho_c$:連続相の密度[kg/m³]
- $\rho_p-\rho_c$:分散相と連続相の密度差(大きさは $\Delta\rho=\rho_h-\rho_l$)[kg/m³]
- $d$:分散相の液滴径[m]
- $\mu_c$:連続相の粘度[Pa·s]
- $H$:液滴が移動する距離(分散帯の厚み)[m]
- $Re_p$:粒子レイノルズ数[-]
- $t$:相分離に要する時間[s]
適用範囲と注意事項
式は、1個の粒子が無限に広い静止流体中を、一定の終末速度で動くときの関係です。ストークス・アレン・ニュートンの式は剛体球を前提とした形で、液滴内部の流れや、液滴どうしが互いの動きを妨げる効果は式に入っていません。分散相の割合が大きい分散帯では、実際の速度は単一液滴の計算値と異なります。
- 代表径:入力する液滴径は1つの代表値です。実際の分散は粒径に分布があり、小さい液滴ほど遅いため、全体が澄むまでの時間は、最も細かい液滴の径で決まります。早見表は、径を変えたときの幅を見るために使います。
- 密度差:密度差 $\Delta\rho$ が小さいと $u_t$ に比例して遅くなり、分離時間は密度差に反比例して延びます。密度差の入力値が測定条件(温度・組成)と合っているかが、結果を左右します。
- 領域の判定:本ツールは $Re_p$ の値からストークス域・アレン域・ニュートン域を自動判定し、対応する式で $u_t$ を求めます。
- 領域の境界:3つの近似式を領域ごとに切り替える方式のため、領域の境界付近では液滴径をわずかに動かすだけで速度・時間が不連続に変化します。特にストークス域とアレン域の境界では速度が約4割跳ぶ段差が生じます(早見表で領域が切り替わる行の時間が飛んで見えるのはこのためです)。境界付近の値は目安として扱ってください。
- 液滴径の影響:ストークス域では速度は液滴径の2乗に比例($u_t \propto d^2$)するため、液滴径が 1/10 になると分離時間は 100 倍になります。撹拌が強すぎて微細分散になると、分離は急に難しくなります。
- 結果の読み方:この計算は液滴が界面まで移動する「沈降律速」の概算です。実際に澄むまでの時間は液滴どうしの合体(合一)にも依存し、界面活性物質・微粒子・反応副生成物などでエマルジョン化すると大幅に延びます。
- 静置試験:設計・トラブル検討では、まず分液ロートやメスシリンダーでの静置試験で、分散層の消失時間・界面の明瞭さ・乳化層の有無を確認してください。
- ニュートン域の近似:ニュートン域の速度式では、抗力係数0.44を4/9と近似しています。0.44をそのまま使う場合より速度は約0.5%小さくなります。Rep が10⁵以上の場合は、適用範囲外の注意を結果に表示します(解説化学工学、221頁、式6・18)。
参考資料
書籍
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